〜これまでのワクチンとどう違うの?〜
今日は患者さんからの問い合わせが多い、新しい肺炎球菌ワクチンの話題です。
肺炎で亡くなる人の 97.9%は65歳以上 とされています。
現在、日本では65歳以上の高齢者に「肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)」が定期接種として行われています。
では、新しく登場した プレベナー20 は何が違うのでしょうか?
1. 肺炎球菌ってどんな菌?
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)は、私たちの鼻やのどにも存在する菌です。
普段はおとなしくしていますが、体の抵抗力が弱まったときに「悪さ」をすることがあります。
特に 高齢者や持病のある方 では注意が必要です。
起こす病気の例:
- 肺炎
- 中耳炎
- 副鼻腔炎
- 髄膜炎(脳を覆う膜の感染)
- 敗血症(血液の感染、命に関わることも)
👉 日本では「肺炎」は高齢者の死因の上位にあり、その原因菌として肺炎球菌が最も多いとされています。
2. これまでの肺炎球菌ワクチンは2種類
大人が接種できる肺炎球菌ワクチンには、これまで次の2つがありました。
ワクチン名 | 特徴 |
---|---|
ニューモバックス(PPSV23) | 23種類の菌をカバーできる「広さ」が特徴。ただし効果は数年で弱まる。 |
プレベナー13(PCV13) | 13種類をカバー。免疫の「強さ」と「長持ち」が特徴。ただし対象は13種類に限られる。 |
そのため、「強さ」と「広さ」を両立するために 2種類を順番に接種 する必要があり、やや煩雑でした。
3. 新しく登場した「プレベナー20」
2024年、日本でも承認されたのが プレベナー20(PCV20) です。
- 20種類の肺炎球菌を一度に予防
- 従来のプレベナー13に加えて、新たに 7種類(8, 10A, 11A, 12F, 15B, 22F, 33F) をカバー
つまり、これまで別々に担っていた 「強さ」と「広さ」 を両立したワクチンなのです。
💉 副反応について
- 腫れや発熱がみられることがありますが、コロナワクチンより軽く、
- インフルエンザワクチンと同程度、
- 以前の「ニューモバックス」よりも軽いとされています。
4. プレベナー20のメリット
- 1回でOK
これまで必要だった「プレベナー13+ニューモバックス」の2回接種が不要に。 - 効果が長持ち
結合型ワクチンのため「免疫の記憶」を作り、数年にわたり効果が期待できます。 - カバー範囲が広い
成人に多い肺炎球菌感染の大半を予防できます。
5. 誰が受けたらいいの?
以下の方は接種が特にすすめられています。
- 65歳以上の方
- 心臓・肺・腎臓の持病がある方
- 糖尿病の方
- 免疫力が落ちている方(がん治療中、脾臓を取った方など)
6. ニューモバックスをすでに打った人は?
- すでにニューモバックスを接種していても、1年以上たっていればプレベナー20を接種可能。
- プレベナー20を打ったあとに、ニューモバックスを追加する必要はありません。
7. 海外の最新事情
アメリカではすでにプレベナー20が広く使われており、
- 65歳以上の人
- 基礎疾患のある18歳以上の人
に対して「プレベナー20を1回接種」が推奨されています。
👉 日本でも今後は 「高齢者の肺炎球菌ワクチン=プレベナー20」 が主流になると考えられます。
8. まとめ
- 肺炎球菌は高齢者や持病のある人にとって命に関わる感染症を起こす菌。
- これまでは「ニューモバックス」と「プレベナー13」を組み合わせて接種していた。
- 2024年に登場した「プレベナー20」は1回で20種類をカバー。
- シンプルで効果が長持ちし、これからの主流ワクチンとなる可能性が高い。
参考文献
- 厚生労働省 感染症発生動向調査(2022年度報告)
- CDC. Pneumococcal Vaccination: ACIP Recommendations. MMWR 2022;71:109–118.
- Senders S, et al. Clin Infect Dis. 2021;73:e1489–e1501.
📌 患者さんへのメッセージ
「肺炎球菌ワクチンは、命を守る予防注射です。
特に高齢の方や持病のある方は、ぜひかかりつけの先生にご相談ください。」
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